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大阪高等裁判所 昭和46年(行コ)20号 判決 1976年1月29日

大阪市浪速区元町二丁目七八番地

控訴人

吉田清一

右訴訟代理人弁護士

香川公一

稲田堅太郎

鈴木康隆

桐山剛

豊川正明

大阪市浪速区船出町一丁目三五番地

被控訴人

浪速税務署長

三村睦雄

右訴訟代理人弁護士

井野口有市

被控訴人指定代理人

高橋欣一

中山昭造

西本秋男

安久武志

宮崎正夫

岸田富治郎

吉田秀夫

祖家孝志

右当事者間の所得税更正決定変更請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和四〇年五月三一日付を以てなした控訴人の昭和三九年分総所得額を一六一万四五六〇円とする更正のうち、総所得額五三万円を超える部分を取消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文同旨の判決を求めた。

二、当事者双方の主張及び証拠の関係は、次に付加訂正するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、それをここに引用する。

(一)  原判決二枚目裏八行目の「である。」の次に、「元来、異議申立並びにこれに対する決定、審査請求並びにこれに対する裁決などは、国民の権利救済を制度的本質とする不服申立の手続であって、課税処分そのものの手続と機能を異にする別個の行政行為である。したがって、権利救済を本質とする不服申立とこれに対する審理は、当然のことながら、権利救済の範囲に限定さるべきものである。してみれば、権利救済の場であるべき本件の如き訴訟において、攻撃防禦方法を口頭弁論終結時まで適宜調査収集して提出できるとするならば、更正処分後に調査して得られた所得の額が合理的かどうかを行政的に判断することになるところ、権利救済機関である裁判所は、かかる行政的な判断機能を有するものではない。かかる観点からみても、本訴における審理の対象は、本件更正がいかなる資料にもとづきなされたか、また該更正がなされた時点における資料にもとづき理由の有無を審査することに限定されるべきである。」を加える。

(二)  同三枚目裏二行目の「それは」の次に「、任意の承諾にもとづくなど」を、また同四枚目裏一行目から二行目にかけての「右調査は」の次に「、決して任意の承諾によってなされたものではなく、」を、それぞれ加える。

(三)  同六枚目表五行目の「当然のことである」を「、申告一般にも妥当する当然のことであって、同規定を例外規定と解すべきではない」と訂正する。

(四)  同一六枚目表後から三行目の「(七〇〇〇枚)」の次の「の」を削除して、そこに「まで印刷された」を加え、また同裏後かから二行目の「三九年中の」の次に「元町店の」を加える。

(五)  同二二枚目表五行目の「折り込んでいた」を「折り込んで仕切りをつけていたから、毎月の売上げの集計は簡単にできる状況にあって、原始記録の不備な場合に該当しない。」と訂正する。

(六)  同二三枚目表一行目の「K記号は」の次に「伝票自体に印刷されていたものではなく、」を、同行の「原告が」の次に「受注の都度」を、同三行目の「なお、」の次に「被控訴人が昭和四〇年二月一八日の調査時に元町店の仕上り品保管明細書で把握したK記号の番号は六五ないし八、〇九〇番であり、しかも」を、それぞれ加え、また同五行目の「過年度分の整理を、」を「過年度取扱分の未配達残品の整理をすべく記録作成され、」と訂正する

(七)  同二三枚目表九行目の「否認する。」の次に「それに、高津店の昭和四〇年度分の売上伝票の記号がBで、その使用枚数は、一月四日より一二月一八日までの間に二、〇〇一から四、七四〇号までの僅か二七四〇枚であったことによっても、昭和三九年度に四、四〇〇枚も使用したというのは、根拠のない主張である。更に、右の四、四〇〇枚の使用から推計される売上金額が金八六万三二八〇円もあったというのであれば、昭和四二年一二月に高津店を閉鎖する必要もなかったのである。」を加える。

(八)  同二三枚目裏九行目と一〇行目の間に、「控訴人が会計帳簿を備付けていなかったというだけで、推計課税を支持する根拠にはならないし、前叙の如く売上伝票により毎月の売上げの集計が簡単にできる状況にあったから、原始記録の不備というのも当らない。また、必要経費のうち、ガス料金につき領収証が見当らなかったとしても、公共料金であるから、誤魔化しは全くきかないし、元町店や高津店は取次店であって水道及び電気の各料金は全く問題にならないうえ、高津店のその他の経費としては、家賃及び人件費にすぎないから、これらの資料により経費の実額調査が可能であり、すくなくとも実額調査のできる資料がないとはいえない。以上の次第であるから、控訴人の場合には、所得の実額を把握することが不可能であるとは到底考えられず、推計課税を肯定すべき前提事実が欠し、本件の課税は違法というべきである。」を加え、同一〇行目の「被告の推計方法」の前に「仮に、推計課税が許されるとしても、」を加える。

(九)  証拠

(1)  控訴人

甲第一四号証、第一五、一六号証の各一、二、第一七、一八号証、検甲第一号証の一、二を提出し、検甲第一号証の一、二は昭和四〇年三月ころ控訴人店舗及びその撤去跡を撮影した写真であると主張し、当審証人山口和吉の証言及び当審における控訴人本人尋問の結果を援用し、原審で認否をしなかった乙号各証の成立は不知、検乙第一号証の一、二が主張の写真であることは認める。

(2)  被控訴人

甲第一四号証、第一五、一六号証の各一、二、第一七、一八号証の各成立は不知、検甲第一号証の一、二が主張の写真であることは認める。

理由

一、当裁判所の認定判断は、次に付加訂正するほか、原審のそれと同一であるから、それをここに引用する。

(一)  原判決二七枚目裏四行目の「而してその」を削除し、同所に「これが解明を通じて権利救済を図る趣旨であるから、同救済の機能を楯として、控訴人主張の如くに解すべき成文上の根拠はもとより、必然性もない。かかる見地からすると、右権利侵害の有無を理由あらしめ、或いはなからしめるための」を加える。

(二)  原判決二八枚目表一〇行目の「何ら規定せず、調査を」を削除し、同所に「何ら規定していないうえ、適正公平な課税の実現を図るとの見地からすれば、正確な所得金額を算定するために必要とする資料を、予め収集することにも充分に合理的な理由が存する以上、そのための調査を、すくなくとも前叙租税債務の成立後、」を加える。

(三)  同二八枚目裏末行の「原告本人尋問の結果」を「控訴本人尋問の結果(原審及び当審、但し、後記措信しない部分を除く)」と改め、同二九枚目裏二行目の「右認定」の次に「に反する前掲控訴人本人の供述部分は措信できず、他に右認定」を加え、同八行目から九行目の「原告本人」を「控訴本人(原審及び当審)」と改める。

(四)  同三一枚目表九行目の「主張するが、」の次に「納税者の利益保護の要請から」を、同一〇行目の「できるけれども、」の次に「同時に課税行政の迅速能率的遂行の確保の要請も無視できないのであつて」を、それぞれ加える。

(五)  同三二枚目表一行目の「尋問の結果」の次に「(原審及び当審、但し、後記措信しない部分を除く)」を加える。

(六)  同三三枚目表三行目の「得られない」の次に「など納税者の資料に依存できない」を、同八行目の「争いがなく、」の次に「仮に控訴人主張のように、該売上伝票に月毎の折込みをして仕切をしていたとしても、それをもつて日付の記載に代えうる程度の客観性を有するとは到底解し難く、」を、同一一行目の「自認するところである」の次に、「し、経費の一部について実額の把握が可能としても、それだけでは経費の実額の全貌を把握し難いことに変りはない」を、それぞれ加える。

(七)  同三三枚目裏後から二行日の「乙第三」の次に「号証、原審証人古川素也の証言により真正に成立したものと認める乙第」を加える。

(八)  同三五枚目裏後から三行目の「原告本人の供述」を「控訴本人の供述(原審及び当審)によれば、K記号伝票は昭和三八年度以前に使用したものであるというのであり、当審証人山口和吉の証言および同証言により真正に成立したものと認められる甲一五号証の一も右供述に沿うものであるが、さきに認定したように、控訴人が昭和三八年一二日二六日にK記号伝票を購入している事実は動かし難いうえ、右証人山口和吉の証言には信用するに足る根拠に乏しいのみならず、控訴人による作為を疑う節さえ存するのであつて、これらの証拠」と改める。

(九)  同三六枚目裏後から二行目の「原告本人の供述」を「控訴人本人の供述(原審及び当審)」と改める。

二、してみれば、控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。

よつて、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用のうえ、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中島孝信 裁判官 阪井昱朗 裁判官 石田真)

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